VPS 4社の公式ドキュメントを読み比べる — 借りた直後の既定は、公式の中で答えが割れた
ConoHa・XServer・シン・さくらの公式ドキュメントだけで、はじめてVPSを借りる人がつまずく6点を並べました。性能は比べていません。借りた直後の既定については、同じ事業者の公式の中で、読むページによって答えが変わりました。
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調べても決まらない
Contents
はじめてVPSを借りるとき、いちばん知りたいのは「借りた直後、そのサーバーは外からどこまで届く状態なのか」だと思います。4社の公式ドキュメントを読んで、まずこの一点を探しました。
同じ事業者の公式の中で、読むページによって答えが変わることがありました。 さくらのVPS では、一方のページが「標準でパケットフィルターが有効になっています」と書き、もう一方が「無効化することを推奨します」と書いています。ConoHa VPS は既定について書いていますが、そこに「例外を除き」という限定が付きます。XServer VPS は仕様マニュアルに見当たらず、公式サイト内の解説記事にありました。シンVPS については、私が見た範囲では見つけられませんでした。
比べたのは ConoHa VPS / XServer VPS / シンVPS / さくらのVPS の4社です。取得日はすべて2026年8月29日、読んだのは各社の公式ドキュメント・公式マニュアル・公式FAQだけです。
この記事で比べていないこと
性能・速度・安定性・使い勝手には一切触れません。 理由は単純で、私が契約しているのは ConoHa VPS の1社だけだからです。残る3社は借りていません。借りていないサーバーの速さや安定性について、私が書けることは何もありません。
第三者のベンチマークやレビュー記事も参照していません。他人が測った数字を自分の測定のように並べると、この記事の性格が変わってしまうためです。
価格も書きません。VPSはキャンペーンが頻繁にあり、静的サイトである以上こちらの記述は書いた時点で固定されます。無料お試しの有無と条件、契約期間の縛りだけを扱います。最新の料金は各社の公式サイトで確認してください。
「おすすめの1社」も出しません。性能を比べていない以上、順位を付けられる材料が手元にないからです。
証拠の強さが2種類あります
この記事に出てくる事実は、次の2種類に分かれます。
- ConoHa VPS についてだけ、実機で確かめたことがあります。 初期設定の記事で書いたとおり、事業者側の管理画面でSSH用とWeb用の許可を追加しないと、外から届きませんでした
- 残り3社については、公式にどう書かれているかだけを見ています。 ドキュメントの文字を読んだという以上のことは、この記事にはありません
「記載を見つけられなかった」の意味
以下、何度も出てくる言い方です。これは探した範囲に書かれていなかったという意味であって、機能が無いという意味にはなりません。探した場所は最後の補足に並べてあります。
見落としの可能性はありますし、そもそも公開されていない仕様もあるはずです。だから表のセルを「あり/なし」にはしませんでした。書けるのは「記載あり」か「記載を見つけられなかった」までです。
見た6つの軸と、その選び方
軸は6つに絞りました。選んだ基準は3つです。
- 契約する前に、公式ドキュメントで確かめられること
- 契約したあとでは、変えにくいか取り返しがつきにくいこと
- 借りてから最初の数日で当たること
この3つを満たすものを並べると、こうなりました。
- 借りた直後、外からどこまで届くか
- コンソール(SSHで入れなくなったときの逃げ道)
- プラン変更
- バックアップ
- 支払い方法と無料お試し
- 契約の縛り
落とした軸もあります。性能とスペックは前述のとおり比べられません。価格は陳腐化します。申し込み時の本人認証も、確認はしましたが上の3基準に乗らないので外しました。
ここで見ているのは、個人が最初に借りる標準プランの範囲です。上位のプランには別の選択肢がある場合があります。実際、軸4でその差が出ます。
軸1: 借りた直後、外からどこまで届くか
| 事業者 | 契約直後の既定状態について、公式に書かれていること |
|---|---|
| ConoHa VPS | 記載あり。Ver.3.0 ではセキュリティグループが標準設定され、外部からの通信には許可設定が必要と書かれている(「例外を除き」という限定つき) |
| XServer VPS | 仕様マニュアルには記載を見つけられなかった。公式サイト内の解説記事には「すべての接続を拒否する設定」とある(2025年更新) |
| シンVPS | 記載を見つけられなかった |
| さくらのVPS | 記載あり。ただしページによって書いてあることが違う。firewalld のマニュアルは「標準でパケットフィルターが有効」、初期セキュリティ設定のページは無効化を推奨している |
ConoHa VPS — 既定について書いている。ただし限定がついている
現在の公式ドキュメントには、こうあります。
ConoHa VPS(Ver.3.0)ではサーバー毎にIPアドレスまたはポート、プロトコルなどでトラフィックを制御するホワイトリスト形式のセキュリティグループ(仮想ファイアウォール)が標準設定されます。
例外を除き、標準では各テナント毎の”default”セキュリティグループがアタッチされているサーバーからのみ通信を許可されているセキュリティグループが設定されます。
外部から通信の許可を行いたい場合は、各サーバーのネットワーク毎にセキュリティグループによる許可設定が必要です。
読むときに落としてはいけないのが、2つ目の引用にある「例外を除き」です。何が例外なのかは、私が読んだページには書かれていませんでした。ですから、ここから言えるのは「例外を除き、標準ではこうだと公式が書いている」までで、すべてのサーバーで必ず全ポートが閉じている、とまでは読めません。
同じページには、OS側のファイアウォールとの重複についての注意も併記されています。
イメージテンプレートによってはOS内でソフトウェアファイアウォールが設定されているため、セキュリティグループとは別にOS内でのファイアウォール設定もあわせて確認してください。
私が実際に借りたサーバーで起きたことは、この記述と辻褄が合っています。管理画面で許可を足すまで外からは届きませんでした。ただしこれは1台ぶんの経験であって、公式の「例外」の中身を確かめたものにはなりません。
XServer VPS — マニュアルと解説記事で書いてある場所が違う
パケットフィルターのマニュアルに書かれているのは、機能の説明です。契約直後にONなのかOFFなのかは、私が読んだ範囲では見当たりませんでした。
なお、パケットフィルターをOFFにすると、すべてのポートへの通信が許可されます。 この場合、お客様ご自身でセキュリティ対策を行う必要があります。
一方、同じ公式ドメインにある解説記事にはこう書かれています。
契約直後の『XServer VPS』は、外部からの不正アクセスを防ぐ目的で、すべての接続を拒否する設定になっています。
ここは扱いに注意が要ります。この文が載っているのは運用ガイドの記事であって、仕様の正本であるマニュアルではありません。記事の構造化データ上は2025年8月公開・9月更新です。仕様書に書かれた約束と、解説記事に書かれた説明を、同じ強さで受け取らないほうが安全だと考えます。
シンVPS — XServer VPS とほぼ同じ文面。初期状態を述べた文は見つけられなかった
シンVPS のパケットフィルターのマニュアルは、XServer VPS のものとほぼ同一の文面でした。ON/OFF の説明、最大20ルールという上限、指定できるポート番号の範囲まで一致します。契約直後の状態を述べた文は、私が読んだ範囲ではどちらにも見当たりませんでした。
機能一覧ページにも、初期状態を述べた文は見つけられませんでした。あるのは機能そのものの説明です。
契約中のVPSに対して通信制限を行うことができる機能です。 利用するポートのみ有効にすることでセキュリティ対策が可能です。
さくらのVPS — ページによって書いてあることが違う
この節を、私は一度「記載を見つけられなかった」と書きました。最初に見ていたのはパケットフィルターのマニュアルと機能ページで、そこでは既定についての答えにたどり着けませんでした。そのあと探索範囲を書き出す作業をしていて、セキュリティ関連のマニュアルをまとめて見ていないと気づきました。そこに、既定を述べた文がありました。
1つ目は、firewalld の設定を説明したマニュアルです。
さくらのVPS では、標準でパケットフィルターが有効になっています。
パケットフィルターが有効になっている場合、Firewalldの設定のほかにパケットフィルターの設定も必要になります。
このページは、対象をこう限っています。
本マニュアルは、さくらのVPS の標準OS(CentOS 7/CentOS 8/CentOS Stream 8)がインストールされているサーバーが対象です。
2つ目は「サーバー作成直後に設定しておくべき初期セキュリティ設定」というページです。こちらの対象の書き方は、もう少し広く取られています。
本マニュアルは、さくらのVPSで Linux ディストリビューションを利用する方を対象とし、管理者として注意したいセキュリティ設定をご紹介します。
さくらのVPSで提供されている標準OS AlmaLinux 9 もしくは標準OS Rocky Linux 9 を前提に記載します。
他のディストリビューションやサービスを利用する場合は、必要に応じて読み替えてください。
そのうえで、こう書かれています。
標準OS Rocky Linux 9では、OS内部のファイアウォール機能firewalldが無効の状態となっているので、有効化する必要があります。
パケットフィルターが有効だと、どちらの設定によってパケットをドロップしているか分かりづらくなる為、無効化することを推奨します。
IPv6は対応しておらず、全ての通信を許可します。
前者は「標準で有効」と言い、後者は無効化を勧めています。どちらのページを読んだかで、借りた直後についての答えが変わります。
これを公式の誤りとは書きません。前提として置かれているOSが違うので、実際の挙動が違うのは自然です。ここで言えるのは、前提の違うページが並んでいて、既定の説明が食い違って読める、というところまでです。自分が借りるOSにどちらが当てはまるのかは、公式が言うとおり読み替えて判断することになります。その読み替えを、契約前の読者がやることになります。
機能そのもののマニュアルのほうは、使い方の説明として書かれています。
「パケットフィルター」は、ご契約中の さくらのVPS の通信制限をコントロールパネル上で設定できる機能です。
このページは、機能の振る舞いについては具体的です。
パケットフィルターはステートレス動作のため、戻りパケットのための通信をあらかじめ許可しています。
そして有効化の手順の冒頭に、こう置かれています。
ご自身のサーバー内でファイアウォール設定を行っている場合は、設定が重複する恐れがあるため「パケットフィルターを利用しない」を推奨いたします。
無効化を勧めているのは、さきほどの初期セキュリティ設定のページだけではありませんでした。 機能のマニュアル自身が、条件つきで同じことを書いています。そのうえで、契約直後に有効なのか無効なのかを述べた文は、私が読んだ範囲では見当たりませんでした。使い方を説明したページなので、それ自体は自然です。ただ、既定を知りたい読者は、ここでは答えを得られません。
有効化の手順の途中に「(初期状態ではSSHの設定が用意されています)」という注記がありますが、これは設定画面を開いたときの初期表示についての説明です。サーバーが納品された時点で通信がどう制限されているかを述べた文として読むと、原文より強い主張になります。
料金・仕様のページには、既定として明記されているものがありました。
本サービス開始後、約72時間は外向きの25番ポートを閉じた設定(OP25B)でのご提供となります。
これは外へ出ていく通信の話で、外から届くかどうかとは別の軸です。
そのかわり、パケットフィルターが効く範囲については、はっきり書かれていました。
対象は「IPv4」アドレスです。「IPv6」アドレスには対応しておりません。
IPv6アドレスでの通信は「全て許可」の状態になります。
外から届くかを考えるなら、ここは見落とせないところだと思います。この機能で通信を絞っても、IPv6 には効かないと公式自身が書いています。さきほどの初期セキュリティ設定のページにも同じ趣旨の一文がありました。同じページには、サーバーの中で動かしているファイアウォールと設定が重複する可能性があるという注意もあります。
ここで ConoHa に目を移すと、同じ論点に逆のことが書かれています。セキュリティグループのドキュメントには、追加できるルールの項目として「イーサタイプ」があり、その説明はこうです。
「IPv4」か「IPv6」が選択可能。
さくらは IPv6 を絞れないと書き、ConoHa は IPv6 も絞れると書いています。同じ論点について、正反対の記述が公式に並んでいます。
XServer VPS とシンVPS のパケットフィルターのマニュアルには、本文に IPv4 も IPv6 も出てきませんでした。そちらが実際に IPv6 をどう扱うのかは、私は確かめていません。書かれていないというだけで、IPv6 も守ってくれる、という意味にはなりません。
この軸から言えること
ここまでを並べ直します。ConoHa VPS は既定について書いていて、そこに「例外を除き」という限定が付いています。さくらのVPS も書いていますが、読むページで答えが変わり、前提のOSが自分と違えば読み替えることになります。XServer VPS は仕様マニュアルに見当たらず、公式サイト内の解説記事にありました。シンVPS については、私が見た範囲では見つけられませんでした。
どれも、「借りた直後の私のサーバーがこうなっている」という保証にはなりません。 書いてある事業者でも、限定が付いていたり、前提のOSが違っていたりします。
ここを「書いていない事業者は開いていて危ない」と読まないでください。分かったのは私が見つけられなかったという一点だけで、実際にどうなっているかは、借りていないので確かめていません。
つまり、どこを借りたとしても最初にやることは変わりません。外からどこまで届くのかを、自分の環境で確かめるところから始めます。 公式を読めば済むという想定のほうが、今回は崩れました。その手順は初期設定の記事に書いたので、ここでは繰り返しません。
軸2: コンソール(SSHで入れなくなったときの逃げ道)
4社とも、ブラウザからサーバーを操作するコンソールがあると書かれています。差が出るのは、そこでコピー&ペーストができるかどうかです。
- ConoHa VPS — コンソールあり。「コンソールではコピー・ペーストが利用できません。ログインパスワードやコマンドを貼り付けしたい場合はテキスト送信機能をご利用ください。」と書かれています
- XServer VPS — VNCコンソールとシリアルコンソールの2種類の記載があり、「VNCコンソールはコピー&ペーストができません。シリアルコンソールはコピー&ペーストができますので、そちらをご利用ください。」とあります。ただしUbuntuデスクトップとWindows Serverはシリアルコンソールに対応していないとも書かれています
- シンVPS — コンソール接続の記載はありますが、VNCとシリアルの区別とコピペ可否の記載は見つけられませんでした
- さくらのVPS — VNCコンソールは「HTML5」を利用し、キーボード操作によるコピー・ペーストは利用できないとあります。シリアルコンソールは「標準OS」及び「カスタムOSの一部」で利用でき、キーボード操作によるコピー・ペーストは「標準OS」のみ対応と書かれています
シンVPS の行について、ひとつ補足があります。
この軸が効いてくる場面は具体的です。鍵でしか入れない設定にしていた場合、秘密鍵を失うと、残る入口はこのコンソールです。そこでやることは新しい公開鍵をサーバーに書き込む作業で、公開鍵は数百バイトの1行です。コピペの効かない画面でそれを打ち込む羽目になります。詳しくはSSHの鍵をなくす前にやっておくことに書きました。
軸3: プラン変更
4社に共通して書かれているのは、サーバーを止めてから行うという点です。ConoHa は「※スペックを変更できるのは停止しているVPSのみです※」、XServer VPS とシンVPS は対象サーバーを「シャットダウン」する必要があるとし、さくらは手順の中でサーバーを「停止中」にすると書いています。稼働させたまま切り替えられるとは、私が読んだ範囲では書かれていませんでした。
上位への変更は4社とも記載があります。分かれるのは下位への変更です。
- XServer VPS — 「下位プランへの変更は対応しておりませんので、再度ご希望のプランをお申し込みください。」と明記
- さくらのVPS — 「下位プランへの変更は対応しておりません。上位プランへのスケールアップのみ対応しております。」と明記
- ConoHa VPS — 下位への変更ができるとも、できないとも明言したページを見つけられませんでした。複数の公式ページが下位プランへの変更を前提にした条件を書いており、手順マニュアルには「※現行プランより下位プランにご変更の場合差額の返金はございません。」とあります。前提にはしているが、できると書いた文は見つかりませんでした
- シンVPS — 可否の組み合わせは表で示されていますが、その表は画像で、テキストでの記載を見つけられませんでした。機能一覧には「管理画面からいつでも上位プランに変更可能です。」とあります
画像の中身を目視で読み取った結果は、この記事には載せません。出典を開いても検証できない情報になるからです。
事業者ごとに、初心者が踏みそうな条件も見つかりました。ConoHa には「※メモリ512MBプランにつきまして、メモリ1GB以上のプランへのプランアップおよびメモリ1GB以上のプランからメモリ512MBプランへのプランダウンはできません。」という注記があります。いちばん小さいプランから始めると、そこから上がれないという意味になります。
さくらのVPS は、スケールアップの条件が細かく書かれていました。申し込んだ当日は変更できず、お試し期間中も変更できないとあります。そして、こう書かれています。
スケールアップを行うとCPUコア数とメモリは自動的に増加いたしますが、ディスクについてはお客様で拡張する必要があります。
CPUとメモリだけが自動で増える、という条件です。プラン変更したのにディスクが増えていない、と後から気づく形になりそうな一文だと思いました。
軸4: バックアップ
ここは、5つの状態を混ぜないことが大事な軸です。「ある」「有償オプション」「上位プランが対象」「記載を見つけられなかった」「無いと明記されている」は、それぞれ別の意味を持ちます。
| 事業者 | 標準プランの範囲で、公式に書かれていること |
|---|---|
| ConoHa VPS | 自動バックアップは有償オプション(512MBプランは対象外)。別枠でイメージ保存があり、リージョンごとに50GBまで無料。ただし使われないまま90日を過ぎたイメージは削除対象になる |
| XServer VPS | 標準プランで使えるのはイメージ保存(手動・シャットダウンしてから)。自動バックアップはビジネスプランが対象 |
| シンVPS | イメージ保存の記載あり。自動バックアップの記載は見つけられなかった |
| さくらのVPS | 「標準・オプション共にバックアップの機能はございません」と明記 |
無いと書いてあるのを見つけられたのは、さくらのVPS でした。
「無いと明記しているのはさくらだけ」とは書きません。軸5では、ConoHa が「ございません」と書いているのを、機能のマニュアルではなくサービス共通のFAQで後から見つけています。無いと書いてある場所は、機能のマニュアルの外にもあります。 全部を見切ったとは言えません。
いいえ、 さくらのVPS は標準・オプション共にバックアップの機能はございません。 同一ゾーンであれば複数台構成でのご利用が可能でございますため、他のサーバとデータを同期する、重要なデータはローカル環境に保存するなどご対応ください。 また、「 Acronis Cyber Protect Cloud 簡易セットアップ 」のご利用もご検討ください。
最後の行は別サービスの案内なので、この記事では比較の対象にしていません。引用の途中を削ると原文を変えたことになるため、そのまま載せています。
無いと書いてあること自体は、むしろ親切だと思いました。読者にとっていちばん困るのは、書かれていないので分からない状態です。
ConoHa のFAQには、ディスク構成についての一文が添えられています。
万が一のHDD障害にも対応できるようRAID構成のサーバーを使用しておりますが、お客様のデータを保証するものではございません。サーバー上のデータにつきましては、お客様ご自身で定期的にバックアップをお取りいただくようお願いいたします。
冗長化されていることと、バックアップがあることは別だと公式自身が書いています。同じページに「一度、削除したVPSのデータは復旧ができません。」ともありました。
なお XServer VPS の自動バックアップはビジネスプランを対象としたもので、標準プランには付きません。この行を「XServer VPS には自動バックアップがある」と要約すると、標準プランを借りる人には正しくない情報になります。
軸5: 支払い方法と無料お試し
無料お試しの扱いは、事業者ごとに書かれ方が違いました。
- XServer VPS — 2GBと4GBのプランを無料で使える「無料VPS」が用意されています。ただし「無料VPSは、コントロールパネルから1日ごとに契約を更新する必要があります。」という条件付きです
- さくらのVPS — 「お申し込み時にクレジットカード払いを選択された場合、全プラン2週間無料のお試し期間がつきます。」とあります。支払い方法の選択が条件になっている点と、お試しは同時に2台までという制限がある点に注意が要ります。この無料には、放っておくと終わらないという条件が付きます。 同じページに「※ キャンセルお手続きがない場合は、自動的に本登録になります。なお、すでにお支払い済の場合はキャンセルできません。」とあり、キャンセルはこちらから手続きするものだと書かれています
- シンVPS — お試し期間について尋ねるFAQへの回答は、全文で「いいえ、ありません。」でした
- ConoHa VPS — 共通のFAQに「無料トライアルはございません。」とあります。ただしこれは ConoHa 全体のサポートに置かれた設問で、VPS 専用のページではありません。書けるのは「ConoHa の共通FAQに無いと書かれている」までです
さくらには、もう1つ読み落としやすい条件があります。「お試し期間の利用可能台数が0台、または「利用しない」を選択してお申込みを行った場合は「本登録」でのお申込みとなります」。お試しのつもりで申し込んだのに本登録になっている、という形が起こりえます。
支払い方法のほうは、次のとおりです。ConoHa はクレジットカードの後払いと、事前に入金する ConoHa チャージの2本立てで、チャージへの入金手段として銀行振込・コンビニ・Amazon Pay などが案内されています。XServer VPS はクレジットカード決済・あと払い(ペイディ)・プリペイド決済。シンVPS はクレジットカード決済とプリペイド決済で、ペイディの記載は見つけられませんでした。さくらはクレジットカード・銀行振込・請求書払いに加え、解約の案内ページに自動口座振替が出てきます。
軸6: 契約の縛り
| 事業者 | 最低利用期間 | 途中解約について書かれていること |
|---|---|---|
| ConoHa VPS | 時間課金には無し(追加IPアドレスのみ30日) | 長期割引の期間中は途中解約を承れない。一括前払い。更新しないと契約終了時にサーバーが削除される |
| XServer VPS | 1ヶ月から契約可能 | 解約手続きは可能。利用期限日まで使えるが、支払い済みの料金は返金されない。残っているプリペイドも返金されない |
| シンVPS | 3ヶ月と明記 | 文面は XServer VPS のFAQと一字一句同じ |
| さくらのVPS | 3ヶ月 | 支払い済みの返金なし。毎月払いは最低利用期間中は解約できない |
ConoHa の時間課金には、各プランのカードに「最低利用期間 無し」と書かれています。FAQにも「追加IPアドレスのみ30日間の最低利用期間を設けています。その他のVPS等サービスに関しましては最低利用期間はございません。」とあります。1か月だけ借りて壊す、という試し方ができる形です。
一方、長期割引を使うと性格が変わります。公式サイトの該当ページには、注記が3つ並んでいました。
※まとめトクご利用期間中の途中解約を承る事はできません。
※まとめトクはご利用期間分の料金を一括前払いでお支払いいただきます。月単位での分割払いには対応しておりませんのであらかじめご了承ください。
※更新を行わない場合、契約期間が終了すると該当のサーバーは削除されます。
3つ目が、この軸でいちばん重い一文だと思います。更新しないという選択が、サーバーの削除につながります。
解約の側にも、日付の条件が1つありました。サポートサイトの解約手順のページに、「VPS割引きっぷの自動更新が有効になっている場合、契約満了日の7日前から更新期間となりますので、解約をご希望の際はあらかじめ自動更新を無効に設定いただく必要がございます。」とあります。やめると決めた日ではなく、その7日前までに操作しておく話です。
ここで名前について1つ書いておきます。同じ割引について、ConoHa の公式サイトは「まとめトク」、サポートサイトは「VPS割引きっぷ」という語を使っています。同じものを指しているのか、世代によって別のものなのかは、公式の記述だけでは判断できませんでした。この記事では、引用元のページが使っている語をそのまま書いています。
さくらのVPS で気をつけたいのは、支払区分によって解約の可否が変わる点です。「毎月払いを利用の場合、最低利用期間中は解約できません。」と書かれています。年間払いのほうは、支払い済みの期間で利用を終了できるとあります。
シンVPS には、読み合わせると答えの出ない箇所がありました。料金ページには1ヶ月から36ヶ月までの契約期間タブが並び、自動更新のマニュアルにも「更新期間は「1ヶ月/3ヶ月/6ヶ月/12ヶ月/24ヶ月/36ヶ月」の中から設定可能です。」と本文で書かれています。一方で、同じ料金ページの注記とFAQは最低利用期間を3ヶ月としています。1ヶ月が出てくるのは更新期間の話で、新規に申し込むときに選べるかを書いたページは見つけられませんでした。ですからここでは「1ヶ月契約ができる」とも「できない」とも書きません。公式が明記しているのは3ヶ月のほうです。
結局どう決めるか
6つの軸を並べても、1社に決まりません。性能を比べていないので、当然そうなります。ここで挙げた事業者のどれかを「おすすめ」と書くための材料は、この記事にはありません。
そのうえで、この6軸から言えることが5つあります。
- 借りた直後の既定状態は、公式を読めば分かるとは限りません。 書いてある事業者でも限定が付き、同じ事業者の中でページによって答えが変わることもありました。仕様マニュアルに見当たらず、解説記事にだけあった事業者もあります。だから、どこを選んでも「自分で確かめる」工程を最初に入れます
- コンソールでコピペができるかどうかは、鍵を失った日にだけ効きます。借りる前に見ておくと、その日の作業量が変わります
- 「無いと明記されている」と「私が見つけられなかった」を、同じものとして扱わないでください。 バックアップの軸には、その2つが並んで出てきます。無料お試しのほうは事情が違い、どの事業者も何かは書いていました。分かれたのは、どのページに書いてあるかでした
- 縛りの形が事業者ごとに違います。最低利用期間で縛るところと、一括前払いと途中解約不可で縛るところがあります。まず試したいだけなら、後戻りしやすい形から始めるのが安全です
- 無料お試しには条件が付きます。支払い方法の選択が条件だったり、毎日の更新操作が要ったりします
私自身は ConoHa VPS を使っていますが、それは4社を比べて選んだ結果ではありません。当時そこしか調べなかったというだけです。この記事を書きながら、他の3社の公式ドキュメントを初めてまとめて読みました。
各社の公式サイトは以下から確認できます。料金は変わるので、必ず公式で最新のものを見てください。
補足
取得日と、時制の扱い
この記事のすべての記述は2026年8月29日に取得したものです。日付表示のあるページは、さくらの一部マニュアル(2024年)、XServer VPS のお知らせ(2024年11月25日)、XServer VPS の解説記事(2025年)、ConoHa の長期割引ページ(2026年8月26日)です。残りは日付表示が見当たらなかったため、「現在の公式ドキュメントによれば」という時制で書いています。
「記載を見つけられなかった」ときに探した場所
公開前に、この記事の結論が4回ひっくり返りました。 全部、私が「書かれていない」と書いた側です。落とした場所は3種類でした。
- いま見ているディレクトリの外。同じ製品の別のサブディレクトリにも、サービス共通のFAQや利用規約にも、仕様は書かれています
- ページの下半分の表。散文だけ読むと、仕様の本体を飛ばします
- 引用した文の2行上。そのページが対象をどこまでに限っているかの宣言です
数えて「◯社だけ」と書こうとするたびに、このどれかで間違えました。だからこの記事では数えず、書いてあることをそのまま並べています。 公式を自分で読むときにも、この3か所は先に見ておくと早いと思います。
軸1について探したのは、XServer VPS がパケットフィルター設定マニュアル・サーバー設定マニュアル一覧・全マニュアル一覧・FAQカテゴリ、シンVPS が同マニュアルと全マニュアル一覧・機能一覧・トップページ、さくらのVPS がパケットフィルターのマニュアルと機能ページ・お申し込み前の注意事項・入門ガイド・OSセットアップ情報・トラブルシュート、そして後から加えたセキュリティ関連マニュアルです。ConoHa は、セキュリティグループの製品文書と IPv6 の製品文書を表まで含めて読み直しました。軸5の無料お試しについては、お支払い方法・ご利用の流れ・VPSのFAQ・長期割引のページに加えて、サービス共通のFAQを見ています。
表のセルに「記載を見つけられなかった」と書いた残りの2箇所についても、探した場所を書いておきます。軸2のシンVPS のコンソール種別は、コンソール接続マニュアルと機能一覧。軸4のシンVPS の自動バックアップは、全マニュアル一覧と機能一覧です。どちらも XServer VPS 側には対応するページがあり、シンVPS 側で同じページを見つけられませんでした。軸3・軸5・軸6の本文にも同じ言い方が出てきますが、そちらの探索範囲までは書き出していません。
引用について2つ
さくらの「お申し込み前の注意事項」のページには、一部の漢字に見た目が同じで文字コードの違う異体字が使われています。この記事では通常の漢字に置き換えて引用しました。原文の文字づかいそのままではありません。
もうひとつ、XServer VPS のお試しに関するFAQのページには、HTMLコメントとして旧版の回答が残っていました。ページを機械的に読むと、表示されていない古い条件のほうを拾ってしまいます。この記事に書いた「1日ごとに更新」は、実際に画面に表示されている側です。公式ページを読むときでも、見えている文字を見に行く必要がありました。
変わりやすいところ
各社の仕様は変わります。この記事の中で特に変わりやすいと考えているのは、XServer VPS の無料VPSの更新間隔、ConoHa の長期割引の名称、シンVPS の契約期間の表示、そして各社の既定状態についての記載です。最後のものは、追記されたときだけでなく、私の見落としが1つ見つかっただけでもこの記事の中心が変わります。実際、公開前に何度もそうなりました。気づいた時点で更新します。